'00/3/31 fri  有珠山噴火

 2000年3月31日 13時8分。有珠山(うすざん) 噴火。

 噴火までの数日間、テレビ画面に映し出される地震速報の頻繁さは、尋常じゃなかったよね。

 そんな報道を受けて、テレビ視聴者は すでにカウントダウンの態勢に入っていて、不謹慎なことなのかもしれないけど、自然の猛威を目の当たりにできるその瞬間を、今か今かと心待ちにしていた面はあるんじゃないかな。

 いざ「噴火」が始まりました。

 真っ先にその報道をしたのは、東京キー局の中ではNHKでした。高校野球の放送を中断して、「噴火報道」に切り替え。NHKの強みは教育テレビがあること。高校野球は教育テレビに切り替えられました。

 しっかし、もともと教育テレビで放送するはずだった番組は中止。これって、「教育」の重要性は「高校野球」に負けるってことでしょかね。要はNHKも視聴率重視なのかな? 視聴率なんか高くなくたって、民放みたいにスポンサーに怒られることはないのにね。

 もっとも、「高校野球」の放送を中止したら、苦情の電話が殺到するんだろうけど。

 そして、民放の中で際立って報道が早かったのは フジテレビ。お昼の人気番組「いただきます」を中断して、「噴火報道」に切り替え。

 噴火することは確実だったから、特別番組の体制は考えていただろうに、その手際の悪さが目立った報道だったなぁ。CMの切り換えがおかしかったり、本来放送している番組(昼メロ)の一部が いきなり挿入されちゃったり。

 そうそう。フジテレビでよく使われる「画面のテロップ文字」。書道っぽいタッチなんだけど、安っぽいワイドショーで「ストーカー男 逮捕!」とか、フジテレビは そんなのによく使います。いっつも「字」の感じがおんなじで、それでいて 既製フォントではなさそうなので、おそらく フジテレビが雇っている専門のテロップ書き職人が居るんだろうけど、

はっきり言って、下品 極まりない。

 ちっとも、うまくないのだ。文字のバランスはおかしいし、画面全体の空間に対してのテロップの入れ方もヘタ。

 手書きテロップにこだわるという他局との差別化は評価に値すると思うんだけども、もうちょっとうまいテロップ書き職人を雇うべきだと思うぞ、フジテレビくん。

 さて、次に「噴火報道」を確認できたのは日本テレビ。

 日テレはこの時間、みのもんたでおなじみの「おもいっきりテレビ」の生放送中なので、特別報道番組への切り換えは比較的やりやすかったんだろうね。

 そうそう、日テレは 生中継のとき、「LIVE」って表示するんだけど、日本は英語圏じゃないんだから、報道番組で そういう表示をされると、ちと違和感を感じてしまうなぁ。

 そして、TBS。

 テロップの入れ方という意味では、TBSの報道番組(ニュース23など)は、すごく洗練されていると思う。

 使用するフォントはとても読みやすいし、どんなときにどのフォントを使うか、どの色を使うか、アンダーラインの入れ方、文字のバックに色をつけるか、などなど、おそらく事細かなマニュアルが用意されているんだろうけど、他局とは一線を画す分かりやすさを実現しているのだ。

 これからも、この洗練されたセンスを継続してもらいたいし、他局も見習ってほしいなぁ。特に フジテレビはね。はは。

 東京キー局の民放で、最後に 報道番組に切り替えたのは テレビ朝日。

 この日 この時間。「徹子の部屋」で、ゲストが上岡龍太郎。運の悪いことに、引退表明をしている彼が、テレビ出演最後となる放送をしていたのだ。

 そう やすやすと「噴火報道」に切り替えるわけにはいかなかったようだ。それでも、13時35分ごろ、徹子の部屋を中断して報道番組に切り替え。


 でもさ、よくよく考えてみようよ。

 「噴火報道」って、予定の放送を中断してまで リアルタイムに放送しなければならないものだったんだろうか?

 もちろん、野次馬感覚で、リアルタイムに噴火の様子を知りたいっていう欲望がないと言わないよ。でも、「報道」という意味では、北海道のあの地区にだけ影響が強いものであって、全国の放送が一気に切り替わって、延々と特別番組を放送する必要があったんだろうか?

 「いただきます」や「昼メロ」や「上岡龍太郎」は、そんな「地域限定の報道」に消されてしまうほど陳腐な番組なんだろうか?


 そんな観点に対して、一石を投じるテレビ局がありましたぞ。それは テレビ東京。

 テレビ東京は その時間、チャールズ・ブロンソン主演の映画「雨の訪問者」を放送してたんだけど、映画を中断してまで「噴火報道」の特別番組に切り替えることはしなかったのだ。

なんと、映画を続けながら、
小画面で噴火の映像を伝えたのだ!

 すばらしい対応ですなぁ。

 これなら、例えば 「家族があの地域に居る」というような特別な事情の人は、NHKなどの他局にチャンネルを変えて より詳しい情報を得るという選択が可能だし、単に野次馬感覚の人は、噴火の様子をリアルタイムに知ることができつつ、もともと鑑賞している映画を楽しむことができたのであります。

 こんな方法がベストかはワカランけど、民放各局は テレビ東京の姿勢について 評価すべき点はあるんじゃないだろうか。 少なくとも、

簡単に中断できるような陳腐な番組

を 垂れ流しているのかもしれないと、危惧すべきなんじゃないかねぇ。