'01/4/7 sat | 神保町のオヤジ | |
人に話しかけられやすい体質ってのは、きっとあるんじゃないかと思うのだ。荒熊はどうも、そういう体質らしいんだな。 街を歩いていると よく道を聞かれたりするんだけど、たいていの場合、そんなに詳しくないところを歩いているときに尋ねられるもんだから、ロクな答えができんのだ。 ふつーにショッピングを楽しんでるときにも、いきなり、「すみません、この商品を探してるんですけどー」と話しかけられたりして、どうも店員と間違えているらしい。紺のズボンに薄めのチェックシャツなんか着てると、店員の制服に見えちゃうんだろかね。 電車に乗っていると、幼稚園児くらいの子とそのお母さんが近くに居て、たまたま その小さな子がうるさくしていた。お母さんは、「ほら、静かにしなさい。 おにいさんに怒られるわよ。 ねぇ」と、オイラをチラッと見たのだ。「おいおい、オイラをしつけの材料に使うな〜!」と思いながらも、ムッ という顔を子供に見せると、ちょっとおとなしくなったりする。「おにいさんに怒られる」なんていう言葉でしつけるのは、まったくもってどうかと思うけどねぇ。怒るなら、お母さん、まずはあなたが怒りなさい。 ま、そんなエピソードは、少なからず誰にでもよくあることなんだろうけど、昨日のパターンは衝撃的だった。 ちょっと用事があって、地下鉄で神保町(じんぼうちょう)まで行ったんだ。用事が終わって、地下鉄の駅へ行こうと交差点で信号待ちをしていると、横からなにやら強い視線を感じたんだよ。まぁ、あまり気にせずに、同伴していた人と話をしていたら、その会話をさえぎるように、その視線の方向からニョキっと手のひらが伸びてきて、オイラの胸の辺りを、なれなれしくパシッと強く押すのだ。 一瞬、「偶然の知り合いかな?」と思って、その手のひらの主の顔を見ると、年は60代か70代かという見知らぬオヤジが、オイラの顔を凝視してるのだ。 だ、だ、誰なんだ!? このオヤジは?? と、ひるんでいると、そのオヤジは言ったのだ。 「ヒゲがいいねぇ〜。すばらしい!」 ..... なんじゃ、そりゃ。 かなりダメージをくらって、クラっと来た荒熊。あと一撃でKOされる〜ってなときに 信号が青になって、何とか難を逃れて地下鉄の駅へ滑り込んだ。 いやぁ、まいった、まいった。 神保町の駅のホームで電車を待ちながら、同伴していた人と また話をしていると、前から あのオヤジがテクテク歩いてくるではないか! またもや、そのオヤジはオイラの前までやって来て、オイラたちの会話を中断させると、 「うむ、立派なヒゲだ! いいねぇ、うらやましいねぇ。」 と 言うと同時に、ニョキっと握手を望む手のひらが伸びてきた。 う〜、なんなんじゃー、この攻撃は〜!? と 頭の中では思っているのに、まるでパブロフの犬のように すっと手を出して握手に応じてしまった。なにやってんだ、オイラは、くー。 オヤジは、握手しているオイラの右腕を、まるでハムのかたまりの質感を指先で確かめるように、逆側の手を使ってプニプニとつかみ、粗暴に上下に振り出した。 そして、一通りの儀式が終わると、何事もなかったかのように、オヤジは スーっとどこかへ消えていったのだ。 荒熊、ノックアウトです。 なんだったんだろなぁ。 電車から降りるとき、あのオヤジがどこからか現れやしないかと、キョロキョロしてしまった。だはは。 |