少年の冒険



少年は草原にいた
どこまでも広がる緑の絨毯 (じゅうたん) は
少年を包みこんでいた

少年がそれまで見たものは
広い緑の草原と
それを包みこむ青い空だけだった

あるとき少年ははじめて
空に浮かぶ太陽を見た
暖かな陽ざしが少年を照らした

少年は立ち上がった
太陽をつかみたいと思った
少年は歩き始めた


少年は崖にいた
はじめて見る海原を見つめていた
広く深い海原を見つめていた

少年の足もとには
海原に向かって
だれかの足あとが残っていた

少年の後ろには草原が広がっている
暖かな絨毯が広がっている
海原は冷たく波打っている

そのとき少年は太陽を見た
海原に浮かぶ太陽を見た
少年はそこに足あとを残した


彼はいつしか草原にいた
どこまでも広がる絨毯を踏みしめて
彼は立っていた

暖かな陽ざしは
この草原を照らす
青い空は限りなく澄んでいる

彼は色んなものを見て
太陽をつかんだかはわからない
でも彼はまたこの草原へ戻ってきた

まるであのときと変わっていない
彼はそう思っている
緑の絨毯は風に靡いている



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