遠い記憶を



いつものように
街を歩いている

ふと振り返ると
後ろから幼い男の子が走ってくる
近寄ってくる

見知らぬ顔
それでもどこかなつかしい顔をして
息をきらしながら
僕を見ている

男の子はその小さな手に
にぎりしめた十円玉を見せながら
きれた息をととのえる間もなく
落としたよと僕にいう

僕の顔と
少年の顔に
笑みがこぼれた

僕は十円玉を受け取り
去ろうとした男の子を呼び止め
さっき買ったばかりの
チョコレートを渡した



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